村上春樹を復習中。
最近読む時間がなかなか取れなかったので、時間がかかりましたが、「国境の南、太陽の西」を読み終わりました。
1992年に刊行された作品で、他の村上春樹の作品の中でも異色な作品と言えると思います。
村上作品では、ありえないと言ってしまえる摩訶不思議なことが起こりますよね。「海辺のカフカ」なんか、猫と話をしちゃったりするし。それに他の作品って冒険的な要素があります。危ない橋を渡るシーンがそれぞれの作品にあるんです。
ところが「国境の南、太陽の西」は超自然的なことが起こらなければ、冒険もない。十分にありうる誰かの人生を描いた作品なんです。極めてリアル。この程度のドラマなら十分自分にも起こりうるとか思っちゃうわけです。そういう意味で怖い作品でもあると思います。
村上ファンならぜひ一読してみてください。
別の村上ワールドを見られると思います。
以下ネタばれです。
---------------
この作品に出てくる「僕」は、他の作品の「僕」と比べて非常にごくありふれた人間として描かれていると思います。そりゃ、誰でもジャズバーを繁盛させることができるとは言えないとは思いますけど、性格的には一般的な中年だと思います。
「僕」と「島本さん」の二人の関係がドロドロするというストーリーは、ごくありふれた小説であるような気がします。村上春樹らしからぬ作品とも言えるんですけど、「イズミ」の存在のおかげで全体が引き締まっているように感じます。「イズミ」の存在が「島本さん」とは上手くいかないということの暗示になっていると思うんです。もし「イズミ」がいなかったら「僕」は「島本さん」とくっついて、妻子とさいようなら~していたに違いありません。
このポーカーフェイス(?)な「イズミ」が実はキーパーソンだと思うんです。
とても読後感の悪い作品ですが、ウィスキーを飲みながら大人ぶって読むにはうってつけかと。
そろそろ自分も中年への階段を上り始めるころかな。