だいぶ話題に上ることが多くなった核問題について、冷静沈着に、とりあえず核爆弾の復習からはじめてみました。
・核兵器製造のステップ
核物質の入手→起爆装置の開発→運搬装置の開発
・そもそも核爆弾とは何か
核爆弾と呼ばれている爆弾は、原子核分裂反応を連鎖的に短時間に引き起こし、強力な熱と衝撃派で周囲を破壊するものです。
核物質は通常の状態では連鎖反応を引き起こすことはありませんが、ある条件を満たすと爆発的に反応が起きます。ある一定質量以上のウラン235もしくはプルトニウム239を集めると自然と反応が起きます。この質量のことを臨海質量といい、ウラン235の場合は約20kg、プルトニウム239の場合は約5kgとなっています。
原理としてはきわめて単純である一方、核物質を手に入れることが難しく、核兵器製造への壁となっています。
・ウラン235の濃縮
ウランは天然鉱物として鉱山で採掘されるもので、鉱山は世界各地にあります。しかし掘り出されたウランはそのままでは核爆弾には使用できません。
ウランには放射性同位体としてU238とU235が存在しており、核燃料として使用できるのはU235です。しかし天然ウランは99.275%がU238であり、残りのわずかな部分がU235となっています。
このU235だけを取り出すことには非常に難しく、歴史的にも大きな困難を伴いました。U238とU235は質量だけが違う同位体のため、化学的性質は同じであり、化学的方法では分離することができません。そのためウランにフッ素を化合させた六フッ化ウランUF6をつくり、気体にした後、拡散速度が違うことを利用した濃縮を行います。これには非常にコストがかかり、大掛かりな施設が必要となります。
・プルトニウム239
Pu239は天然には存在しない元素であり、人工的に作られるものです。U238に中性子を一つ吸収させることによって作ることが可能であり、原子炉を利用すれば比較的容易に入手することができます。
黒鉛を減速材として中性子を減速させてU238に衝突させることにより、効率的にPu239を手に入れることができます。
・核爆弾の起爆装置
一般的に核爆弾と呼ばれているものには大きく分けて二種類あります。一つは各物質として濃縮ウラン235を使用したもの、もう一つは核物質としてプルトニウム239を使用したものです。広島で使用されたのは前者であり、長崎で使用されたのは後者となります。
どちらも核分裂連鎖反応を利用した爆弾であることには違いはありませんが、起爆装置に大きな違いがあります。
ウラン型の場合、長い筒の両端にU235をそれぞれ臨界質量以下にして配置し、爆発させたい場合には両者をくっつけるという起爆装置を利用します。片方を鉄砲の弾のように打ち出して衝突させることから「ガン型」と呼ばれます。原理は単純であり、技術的にも用意なものである一方、装置が大きくなる欠点があります。
プルトニウム型の場合、いくつもの部分に分割された状態のPuを一瞬で球形に圧縮することによって起爆します。爆薬によって圧縮するので「爆縮型」と呼ばれています。この爆縮は非常にデリケートに行わなければならず、「トマトの皮を破らずに圧縮する」と言われるほどで、技術的に難しいものとなっています。この火薬の配置から「爆縮レンズ」と呼ばれる部分は長く機密とされていました。
爆縮が失敗すると、十分な量のPuが反応しないため、爆発力が小さくなる「未熟爆発」となってしまいます。そのため、プルトニウム型の場合は核実験を行う必要があるのです。
・核爆弾の運搬
核爆弾を首尾よく開発することができたとして、問題はその爆弾を標的までどのように運搬するかということになります。
核先進国ではだいぶ小型化が進んだとはいえ、核爆弾はその性質上から重たいものとなります。ミサイルで運搬するにせよそれなりに大きなペイロードを積めるものである必要があります。ただ、爆発が大きいため、ピンポイントで標的にヒットさせる必要がないので、大雑把に標的周辺に到達できればよいとも言えます。
飛行機での運搬は、制空権が完全に確保できている場合でないと、ペイロードが重たいため非常に危険となります。
現在の北朝鮮はステップの第二段階であり、まだ起爆装置が完全なものができていないと見るのが妥当でしょう。ミサイルに搭載できる程度に小型軽量化するにはさらに高い技術が必要ですが、時間があれば不可能ではないと思われます。
さて、これからどう事態が転んでいくのか。